動画『いろいろな花』
- 2026.10.19
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小川未明は今からちょうど百年ほど前の児童文学者で、日本のアンデルセンの異名も取る伝説的な童話作家です。生涯で1200編もの童話を残し、青空文庫に収録されているそれらを読めば、誰もがその読みやすくロマンティックで奥行きの広い世界に新鮮に驚くことでしょう。弱者や子供に寄り添った作品は親しみやすく、21世紀になった現代でも高く評価されています。
それだけの数の作品を作った作家にも関わらず、未明の人生は恵まれていたとは言い難く、経済的にも追い込まれた時期には子供が栄養不良に陥ってしまったと言います。未明は幼い長男と長女を相次いで病で失ってしまいます。その苦境の中でも、未明は童話を、亡くした子供たちへの手向けの様に書き続けました。

今回の動画で取り上げた「いろいろな花」では、自然界の美しい存在達が、それでも己の姿を恥じ入ったり、無残に朽ちるのを繰り返してしまう短編小説です。あまりにもあっけなく書かれる死に、呆然としてしまいます。全てが美しく儚い存在とする作品世界は、人が通らせた一匹の馬によって文字通り踏みにじられ、消え去ってしまいます。その短い生の中の願いや想いに未明らしいロマンが滲む本作の冒頭には「さまざまの草が、いろいろな運命をもってこの世に生まれてきました。それは、ちょうど人間の身の上と変わりがなかったのです。」と、あります。儚く消える命は、未明にとって身近で有り触れた事柄であったと思い知らされる文です。
小川未明のネガティブな作風は批判の対象となったことすらあります。戦後まもない焼けた時代に住む人々は死の影を、未明の描いた児童文学の中の死すらも恐れたのです。未明の時代から百年、今も世界は未明の描いた悲劇の側にあります。
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