消えゆくもの

消えゆくもの

人間の中には、一部の人にしか備わっていない特殊能力を持って生まれてくる者も居る。両方の手を使える両利き、短時間寝るだけで充分なショートスリーパー、味覚が通常より鋭いスーパーテイスターなど、よく聞くものやあまり馴染みのないもの、持っている知識は人それぞれだと思う。

私には絶対音感がある。絶対音感とは、簡単に言うと、音を聞いただけで音名(ドレミ)が分かる特殊能力だ。例えばピアノでソの音を聞けば、後ろを向いていても「あ、今の音はソ」と分かる。絶対音感と言ってもその程度は人によって様々で、私の場合、机をバンと叩いて「これ何の音だ?」と聞かれても、それは「?」である(聞かれたら「今の音は『バン』でしょ」と大真面目に答えるだろう)。然程高い能力は持っていないので、協和音しか分からない。判別出来る和音は精々三和音までである。

この絶対音感、生まれた時からあったのか、幼少期よりピアノを習っていた為に備わったものなのか。生まれ持った能力の話から入ったものの、私の場合、「気づいたらこうなっていた」それしか分からない。当然生まれた時の記憶などないので、全部想定だ。だが、天性の場合もあるし、後で身につくものでもあるというのは本当らしい。どっちでもいいと思っている。生活していていつも役立つものではなく、特別便利だと思った事はないが、父はよく「Asmoは絶対音感があるからね」と羨ましがる。人間は皆、音が分かるものだと私は思っていた。違うと知った時、正直信じられなかった。

だが最近、音を聞いてもすぐに何の音か答えられなくなったし、間違える事も増えた。うちのピアノは今誰も弾かない為調律をしておらず音が半音狂っているのだけど、それでもだ。白鍵はまだよくても、黒鍵となるといよいよ怪しい。音楽のある生活から離れてかなり経つというのもあり、能力が薄れつつあるのかもしれない。

ネットで調べてみたのだが、この間は「絶対音感は消える事がある」と書いてある記事を見つけ、かと思えば別の日には「絶対音感は消えません」という記事を見つけ…どっちが正しいのか、という状態だ。でも確かに、頻繁に音を聞いて鍛えなければ、ある程度鈍くはなるのだろう。ちょっと前は、父が適当に弾くピアノの音を、白鍵・黒鍵共にパーフェクトに答えられていた。その度に褒められ、「もう一度ピアノをやらないか」と誘われたのだが、楽譜を読めないという致命的な欠点があるので断り続けた(それなのによくピアノ10年間やってたなと自分でも感心する←耳で聞いて覚えていた)。能力を自慢出来る人生も、遂に終わりが来たのかもしれない。

何かを手に入れれば、何かが消える。そんなものだ。勿論寂しさはある。だがもし仮に絶対音感が完全に消えても、人より聴力に優れている事に変わりはない(耳がよすぎてたまに困る事もあるけれど)。「まぁそれでもいいかな」と思い始めている。雨が降り始めた音や、危険を知らせる音など、他の人には聞こえない音をいち早く吸収して、色々な事に気づけるよう頑張りたい。

「Asmoは耳がいいから助かる」…聴力に限界が来るまで、周りから頼られるように。

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